欧州自動車市場において、日本の自動車メーカー(OEM)とティア1部品サプライヤーは重要な存在感を示しています。トヨタや日産など日系メーカー各社は現地生産のみならず、研究開発(R&D)拠点を欧州各地に設け、現地ニーズに合った車両開発や先端技術の研究に取り組んでいます。例えばトヨタは1990年以降で欧州に110億ユーロ以上を投資し、約9万人を雇用するまでに欧州事業を拡大しています 。日産も欧州全域でデザイン・R&D・生産・販売に1万7千人超を擁し、海外メーカーとして屈指の現地展開を誇っています 。こうした大規模な現地体制の背景には、多様化する欧州の顧客ニーズや環境規制に迅速に対応するために、欧州での研究開発が欠かせないという認識があります。以下では、日系自動車OEM各社の欧州R&D拠点や特徴、また日系ティア1サプライヤーの欧州での開発活動について、最新動向も交えて紹介します。
日系自動車OEMの欧州R&D拠点
トヨタ自動車:ベルギーを核とした開発拠点網
トヨタは欧州においてブリュッセル近郊のベルギー・ザベンテムに大規模なR&Dセンター(Toyota Motor Europe Technical Centre)を構えています 。1987年設立の同センターは、欧州向け車両のボディ設計や主要部品の開発・評価を担い、2006~2007年には拡張工事で施設面積を倍増させ機能強化を図りました 。このベルギーR&D拠点では、欧州で生産される全トヨタ車のボディエンジニアリングや、欧州市場向けディーゼルエンジンの評価などを担当し、欧州の多様な要求に応える製品開発力の中核となっています 。またニース(フランス)のデザイン拠点「ED^2」では、欧州市場向けの先進デザインやコンセプト開発を行っており、ザベンテムにも量産車デザイン支援のためデザイン部門が再設置されています 。さらにドイツ・ケルンにはモータースポーツ開発拠点のトヨタGAZOO Racing Europe(旧トヨタ・モータースポーツGmbH)が存在し、レーシングカーの開発製造のみならず市販車への技術フィードバックも担っています 。このようにトヨタはベルギーを中心に西欧各所にR&D拠点網を築き、欧州市場のニーズや規制に合致した車両設計・技術開発を推進しています。
日産自動車:欧州生まれのヒット車を支える開発体制
日産もまた欧州に独自の開発拠点を展開しています。中核となるのが英国クランフィールドに所在する日産欧州技術センター(NTCE, Nissan Technical Centre Europe)で、1988年設立以来30年以上にわたり欧州向け日産車の設計・開発を牽引してきました 。NTCEは当初英国サンダーランド工場の技術支援から始まりましたが、現在では欧州発のヒットSUV「キャシュカイ」や電気自動車「リーフ」を含む32車種の開発・導入に貢献し、1,000名以上の技術者を擁するグローバル開発拠点へ成長しています 。欧州仕様リーフの開発では、欧州顧客の要求を製品に反映し、生産立ち上げまで主導するなどNTCEが中心的役割を果たしました 。NTCEの拠点は英国クランフィールド本部のほか、スペイン(バルセロナ)、ベルギー、ドイツ(ボン)にも拡大しており、車両全般からパワートレイン、品質研究まで多岐にわたる開発業務を担っています 。ロンドンのパディントンには日産デザインヨーロッパ(NDE)が置かれ、キャシュカイなど欧州戦略車のデザインを創出しています 。加えて、フランス・モンティニーに欧州地域統括拠点を置き(AMIEO本部)、欧州・インド・中東・アフリカまで含めた広域の経営を統括しています 。このような開発体制によって、日産は欧州市場向けに魅力ある車種を次々と投入し、現地生産と一体となった商品競争力を実現しています。
本田技研工業:独と英を拠点に先進技術を追求
ホンダは欧州ではドイツとイギリスにR&D拠点を構え、現地での技術開発や先端研究に取り組んでいます。ドイツ・フランクフルト近郊のオッフェンバッハには「Honda R&D Europe (Deutschland) GmbH」が位置し、四輪車のみならず二輪車やパワープロダクツも含めた欧州向けの研究開発を行っています 。同施設では特に再生可能エネルギーや水素など環境技術に注力しており、近年は敷地内にグリーン水素製造設備を導入して「スマートカンパニー」実証を進めています 。このプロジェクトでは、大規模な太陽光発電と蓄電池を備えた社内マイクログリッドを構築し、余剰電力で水電解からの水素を製造・貯蔵して燃料電池車に活用する先進的な試みが行われています 。こうした欧州現地での実証により、ホンダは再生エネルギーの有効活用やCO2フリー水素社会に向けた技術検証を進めています。また、オッフェンバッハにはホンダ・リサーチ・インスティテュート(Honda Research Institute Europe)も併設され、AIやロボティクスなど将来技術の研究拠点となっています 。一方イギリスではかつて欧州車生産の要だったスウィンドン工場が閉鎖されましたが、開発拠点としては英国バークシャー州レディングに「Honda R&D Europe (U.K.) Ltd.」が存在し、欧州市場に適合した自動車設計や部品開発機能を維持しています 。ホンダは欧州の厳しい環境規制に対応するため電動化戦略を加速しており、欧州では2022年までに販売車種をすべてハイブリッドまたはEVとする目標を前倒しで達成しました 。このように独自の技術開発と電動化への素早い対応によって、ホンダは欧州市場での存在感と技術力発信を続けています。
マツダ:ドイツ開発センターでの技術適応とデザイン
マツダは欧州における規模こそ他社ほど大きくないものの、ドイツに研究開発拠点を構え独自色を発揮しています。フランクフルト近郊のオーバーウルゼルには「Mazda Motor Europe」の欧州R&Dセンターがあり、1990年に「マツダ・リサーチ・ヨーロッパ (MRE)」として設立されて以来、現地技術者による製品開発や市場調査を行ってきました 。この施設では欧州の新技術動向の分析や、欧州向け車両の部品・アクセサリー開発を担い、マツダ本社への技術フィードバックも行っています 。また同拠点はマツダ全球で3か所あるデザインスタジオの一つでもあり、欧州の感性を取り入れたデザイン提案もここから発信されています 。例えば欧州市場向けに投入されるモデルの内外装デザインやカラーリングの検討などで、欧州R&Dセンターの知見が活かされています。マツダはフォードとの資本関係解消後、欧州での生産拠点を持ちませんが、ドイツでの研究開発活動を通じてEUの環境規制適合(排ガス・安全基準への対応)や走行テストなどを実施し、欧州市場での製品競争力確保に努めています 。例えば最新のスカイアクティブエンジン技術も欧州の実走行条件で評価を重ねるなど、小規模ながら機動的な開発拠点として機能しています。こうした地道なR&D活動により、マツダは欧州顧客の嗜好に合った独創的なモデルを提供し続けています。
その他の日系メーカー:協業による展開
上記以外にも、三菱自動車やスズキなど日系OEMが欧州に拠点を構えています。三菱自動車はドイツ・フランクフルト近郊トレブールに欧州デザインスタジオ(Mitsubishi Design Europe)およびR&Dセンターを設置し、現地市場向けデザイン開発を行ってきました 。もっとも近年の車種開発ではルノー・日産アライアンスの一員として欧州向け車両技術を共有する傾向が強く、自社単独の大規模R&D拠点運営は限定的です。一方、ハンガリーに生産工場を持つスズキは、欧州域内に明確なR&Dセンターはありませんが、マジャールスズキ工場での生産車種開発には日本本社やトヨタとの協業が見られます。例えばスズキはトヨタとの提携を通じて欧州向けハイブリッド車技術を導入するなど、パートナー連携による技術対応を進めています。このように、各社規模や戦略に応じて、欧州R&D体制にも違いがみられます。
日系ティア1部品サプライヤーの欧州R&D活動
デンソー:パワートレインからモビリティソフトまで現地開発
トヨタグループの大手サプライヤーであるデンソーは、欧州各地で研究開発・技術センターを運営し、自動車部品の現地適応開発や先端技術研究を行っています。主力拠点の一つがドイツ北部アーヘン近郊のアーヘン工学センター(AEC, Aachen Engineering Center)で、欧州初のディーゼル燃料噴射系R&D拠点として2005年に設立されました 。AECではディーゼルエンジン用インジェクタやコモンレールの適合設計・性能評価からスタートし、その後ガソリン・ハイブリッドを含むパワートレイン全般の開発能力を備えるまで拡充しています 。2010年には約1,930万ユーロを投じて施設を大幅拡張し、エンジン及びシャシー用ダイナモ、電子制御ユニット(ECU)のハード・ソフト開発ラボなど最先端設備を導入しました 。欧州の厳しい燃費・排出ガス規制に対応すべく、デンソーはAECで電動パワートレインやエンジン熱管理技術の現地開発を強化し、欧州自動車メーカーとも密接に連携してソリューション提供しています 。またデンソーはドイツ・ミュンヘン近郊エヒングにも拠点を持ち、欧州の完成車メーカー向け営業・技術支援を行っています 。
さらにデンソーは近年、新たなモビリティ分野の開発にも欧州で取り組んでいます。例えばフィンランド・エスポーに2018年「デンソー・ヘルシンキ・イノベーションラボ」を開設し、欧州のスタートアップ企業や大学と協業しながらスマートシティ向けモビリティソフトウェアの開発を進めています 。デンソーにとってこの北欧拠点は欧州で唯一のモビリティソフト開発拠点であり、現地の5G通信環境や自動運転実証フィールドを活用して、新サービスの実証や都市交通ソリューション創出を目指しています 。このようなオープンイノベーション志向の活動は、CASE(コネクテッド、自動運転、シェア、電動化)の流れに対応する上で重要な役割を果たしています。
なお製品分野では、デンソーは欧州でHVAC(空調)やパワートレイン部品の生産拠点もチェコやハンガリーに構えており、これら工場に付随するエンジニアリング部門が現地顧客対応や試作品の試験も行っています 。総じてデンソーは、欧州におけるパワートレイン技術から次世代モビリティサービスまで幅広い領域で開発活動を展開し、欧州の自動車産業に技術供給しています。
アイシン:ベルギーの技術センターを軸に電動化対応
トヨタグループでトランスミッション大手のアイシン(旧アイシン精機)も、欧州に研究開発拠点を設け現地展開しています。アイシンは傘下のアイシンAW(オートマチックトランスミッション部門)を通じて、ベルギー南部ブレイン・ラルーに「AWヨーロッパ技術センター (AW Technical Center Europe)」を構えています 。この施設は欧州向けATやカーナビ等の開発拠点として設立され、隣接するモンス(ボードゥール)工場でのAT電子部品生産やトランスミッションのリビルト事業と連携しています 。欧州ではアイシン製ATがトヨタのみならずBMWやボルボなど他メーカーにも広く採用されており、現地技術センターが各メーカーとの調整や仕様適合を担う重要な役割を果たしています。また近年は電動車両の普及に伴い、アイシンも電動駆動ユニット(e-Axle)など新分野へのシフトを進めています。デンソーとの合弁で設立したBluE Nexus社では電動車用ユニットの開発・供給を行っており、欧州メーカーにも提案を行っています 。アイシン欧州技術センターは、こうした次世代製品に関しても欧州市場の要求を踏まえた開発・評価を行い、現地のEVメーカーや部品サプライチェーンとの協業を模索しています。生産面では、アイシンはチェコや英国、トルコにも工場を持ち、欧州車向け部品供給を行っています 。それら製造拠点とも連携しつつ、ベルギーのR&D拠点が設計から試作、テストまで一貫対応する体制を構築しています。
NSK:欧州技術センターで次世代ベアリング開発
日本精工(NSK)はベアリングおよびステアリングで世界トップクラスのティア1企業であり、欧州でも複数の研究開発拠点を運営しています。NSKは欧州地域の総合技術センター(ETC: European Technology Centre)をイギリス(ニューアーク)、ドイツ(デュッセルドルフ近郊レーティング)、ポーランド(キェルツェ)の3か所に分散配置し、約200名規模の技術者チームが地域密着型の開発を行っています 。これら欧州技術センターでは、新製品の設計開発、ベアリングやその周辺部品の詳細解析、用途別の性能試験、鋼材メーカーと連携した新素材開発、そして欧州顧客や現地工場への技術サポートという5つの重点活動領域を設定しています 。例えば、自動車用の車輪ハブベアリングについては実車荷重を再現できる試験設備を備え、乗用車から商用車まで各社の要求に合わせた耐久試験・潤滑解析を実施しています 。また電動化に伴い需要が高まる電動モーター用高速軸受や低摩擦ベアリングの開発にも注力しており、欧州顧客からの技術要件に応えるためFEA(有限要素解析)やシミュレーション技術を駆使した設計提案を行っています 。さらにNSKは欧州でのステアリングシステム開発にも関与しており、独レーティング拠点では電動パワーステアリング(EPS)のテストセンターを運営しています 。これにより欧州の自動車メーカーに対してきめ細かな技術対応を行い、走行フィーリングのチューニングや安全規格への適合を現地で迅速にサポートしています。以上のように、NSKは欧州技術センター群を活用して材料開発から製品設計・試験まで幅広く現地展開し、ベアリング分野での技術リーダーシップを維持しています。
その他主要サプライヤー:ブリヂストンや電装品各社の取り組み
日系の他の主要ティア1企業も欧州に独自のR&Dネットワークを築いています。例えばタイヤ大手のブリヂストンは、イタリア・ローマに欧州技術センター(Technical Center Europe)を置き、1960年代から欧州向けタイヤの開発拠点として機能させてきました 。同センターでは最新のシミュレーション技術や実車テストを組み合わせ、欧州の路面環境やユーザー要求に合ったタイヤ設計を行っています。近年ではバーチャル開発能力を強化するためドライビングシミュレータを導入し、開発スピードと効率向上を図る投資も行われています(2020年時点) 。またワイヤーハーネス大手の矢崎(Yazaki)や住友電工も、ドイツなどに欧州技術センターを持ち、自動車メーカーの新車プロジェクトに合わせた配線モジュール開発や試作を現地で行っています。計器メーカーの日本精機(Nippon Seiki)は英国に開発拠点を設け、欧州車向けディスプレイメーターの設計調整を担っています。さらに近年では日立Astemo(旧日立オートモティブとホンダ系サプライヤーの統合会社)が独・ミュンヘンに技術開発センターを開設し、パワートレインやADAS(先進運転支援)の欧州展開に注力しています。Calsonic Kanseiとマニエッティ・マレリの統合で生まれたマレリ(Marelli)は、イタリアやドイツに強みを持つ旧マレリ側のR&D拠点と、イギリスに拠点を持つ旧カルソニック欧州部門の技術力を結集し、グローバルサプライヤーとして日本と欧州の知見を融合させています。このように数多くの日系ティア1が欧州に根を下ろし、主力製品ごとに現地開発・試作体制を築くことで、欧州自動車産業を支える存在となっています。
EV・CASE時代を見据えた中長期的な役割と動向
欧州の自動車業界は電動化(EV化)やコネクテッド、自動運転といった「CASE」分野で世界をリードしており、日系企業の欧州R&D拠点もこれら潮流への対応において重要な役割を果たしています。特に電動化(Electrification)の分野では、欧州連合(EU)のCO₂規制強化や2035年以降の新車エンジン車販売禁止方針に対応するため、日系各社は欧州戦略を大きく転換しています。前述のようにホンダは欧州でいち早く全モデルの電動化を完了し 、日産も欧州R&D拠点で培ったEV技術を背景に「リーフ」に続く次世代EVやe-POWERハイブリッドを投入しています。トヨタもハイブリッド主体から電気自動車へのシフトを強めており、bZ4Xなどの新型BEVを含むSUVラインナップを欧州市場向けに拡充する計画を2025年までに打ち出しています 。欧州は他地域に比べ電動車の普及率が高く、トヨタも現地ニーズに応えるためBEV製品群の強化が必要と認識しています 。その一環として、ベルギーのR&Dセンター内に燃料電池(FC)モジュールの欧州組立ラインを設置し、第2世代燃料電池システムの現地生産を開始するなど、水素分野でも欧州発の供給体制を整えています 。実際にトヨタは英国内で燃料電池車ヒラリー(Hilux)の試作プロジェクトを政府支援の下で進めており、ベルギー製のFCモジュールを搭載するなど欧州R&D拠点と連携した取り組みが行われています 。
自動運転(Autonomous)・コネクテッド(Connected)の領域でも、日系企業は欧州での開発・実証に力を入れています。日産は「インテリジェントモビリティ」構想のもと、欧州を含む世界各地で自動運転や車車間通信の技術実証を展開しており、その成果を車両の商品化に活かしています 。欧州ではプロパイロット(運転支援システム)の公道実験を英国で実施したり、フランス・パリ近郊でロボタクシー実証に参加するなど、現地R&Dチームが積極的に寄与しています。またトヨタは欧州のスタートアップとの協業や投資にも乗り出しており、英AI企業への出資や仏発ベンチャーとのモビリティサービス開発を通じて、デジタル技術の欧州エコシステムに参画しています。デンソーも上述のフィンランド拠点を拡大し、周辺国のベンチャーと共同でMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)アプリや次世代交通システムを研究しています 。さらにデンソーは英国のCeres Power社と固体酸化物形燃料電池・電解セル技術で長期提携を結び、欧州の水素関連技術を自社の将来製品に取り込む戦略も進めています 。この提携により、デンソーはCeres社の次世代SOEC(固体酸化物電解セル)技術を導入して水素製造向け装置を量産化する計画であり、クリーンエネルギー分野での日本と欧州の協業モデルとなっています 。
パートナー連携の面では、日系と欧州企業の協働がこれまで以上に活発化しています。トヨタとBMWの協業(スポーツ車共同開発や燃料電池技術提携)、日産・三菱とフランス・ルノーのアライアンス強化、ホンダと英石油会社のEV充電インフラ連携など、国境を越えた企業提携が新技術領域で進んでいます。部品メーカー間でも、例えばアイシンと独ボッシュがトランスミッション開発で協力した事例や、パナソニックとノルウェー企業による欧州電池工場計画への参画など、日欧がタッグを組むケースが増えています。これらは欧州のCASE潮流に日本企業が乗り遅れず貢献していくための戦略的パートナーシップと言えます。
総じて、欧州に展開する日系OEM・サプライヤーの研究開発拠点は、電動化・コネクテッド・自動運転といった自動車産業の大変革期において、日欧双方の技術交流のハブとなっています。現地での開発活動を通じ、日系企業は欧州の高度な環境規制や市場要求に適応すると同時に、自社のイノベーション力を高める好循環を生み出しています。
まとめ:欧州自動車産業への貢献と将来展望
欧州各地に根付いた日系自動車メーカーとティア1サプライヤーの研究開発拠点は、単に自社製品の現地対応に留まらず、欧州全体の自動車技術革新に重要な貢献をしています。現地の人材を活用し、欧州企業や大学との協働を深めることで、日本発の高度なものづくり精神(「モノづくり」)と欧州の先進技術文化が融合し、新たなソリューションが数多く創出されています。例えば、日産の欧州R&Dチームが手掛けたクロスオーバーSUVは欧州市場の一大トレンドを築き 、トヨタの燃料電池技術は欧州の鉄道や商用車プロジェクトにも提供され始めています 。さらにデンソーやアイシンといった部品各社も、欧州の完成車メーカーを支える不可欠なパートナーとして信頼を獲得し、共同で次世代車両技術を開発する動きが活発化しています。
今後の展望として、欧州における日系企業のR&D拠点は、電動化・デジタル化が進むモビリティ社会で一層その存在感を増すでしょう。欧州のカーボンニュートラル目標達成やCASE革命には多くの技術課題がありますが、日本企業の強みであるハードウェア技術や品質管理ノウハウがそれら課題解決に寄与する場面は多いはずです。実際、日産は「欧州で最も魅力的なアジアブランドになる」ことを目標に掲げており 、トヨタも「各地域のニーズに合わせた最適な電動車オプションを提供する」として欧州でのマルチパス戦略を鮮明にしています 。日系ティア1もまた、欧州の自動車メーカーと共創しながら新技術を育て上げることで、自社の事業拡大と持続可能なモビリティ実現の双方に貢献していくでしょう。
欧州と日本の自動車産業は長年にわたり切磋琢磨し、協力関係も築いてきました。その橋渡し役を担う欧州現地のR&D拠点は、これからも両地域の知見を結集する要として重要性を増すと考えられます。日系企業の技術力と欧州の革新力が交わることで生まれるシナジーにより、より安全で環境負荷の少ないモビリティの未来が切り拓かれていくことが期待されます。
Reference
https://global.toyota/en/detail/268937
https://en.wikipedia.org/wiki/Toyota_Motor_Europe
https://www.nissan-global.com/EN/COMPANY/PROFILE/EN_ESTABLISHMENT/EUROPE
https://global.honda/en/about/group/RandD
https://www.insidemazda.co.uk/2018/10/16/mazda-announces-new-european-rd-vice-president/
https://en.wikipedia.org/wiki/Mitsubishi_Motors_Europe
https://www.denso.com/global/en/news/newsroom/2010/100714-01
https://www.enterespoo.fi/success-story/denso-came-espoo-quality-startups-stayed-quality-living
https://en.wikipedia.org/wiki/Aisin
https://www.aisin-europe.com/aisin-europe-s-a
https://www.nsk.com/eu-en/tools-resources/research-and-development/nsk-research-development-centres
https://www.bridgestone.com/corporate/locations/rd
https://global.toyota/en/newsroom/toyota/42383534.html
https://www.toyota-europe.com/brands-and-services/toyota-fuel-cell/fuel-cell-technology





