— 欧州工場建設の実績から見るビジネス拡大のヒント
はじめに
日本の大手総合建設会社、いわゆる「スーパーゼネコン」は、一般に鹿島・大林・清水・大成・竹中の5社を指します。これらの企業は国内だけでなく海外でも多くの大型プロジェクトを手がけており、特に製造業の海外投資に伴う工場建設は重要な事業領域となっています。
一般的に、日本メーカーが海外で日系ゼネコンを使う理由としては、
- 日本での長年の取引関係
- 日本語でのコミュニケーション
- 日本的な品質感覚や意思決定プロセスへの理解
などが挙げられます。
しかし欧州での実績を見ると、日系ゼネコンの顧客は日系企業だけではありません。
むしろ、韓国・ドイツ・米国・スイスなど非日系メーカーからの工場案件も多く受注しています。
つまり、非日系企業にとっての日系ゼネコンの価値は「日本語対応」ではなく、製造施設プロジェクトを確実に立ち上げる能力にあると言えます。
本記事では、欧州での実例をもとに、
- 日系ゼネコンの欧州工場建設実績
- 非日系企業が日系ゼネコンを採用する理由
- そこから見える欧州市場での営業戦略
を整理します。
欧州での主な日系ゼネコンの工場建設実績
竹中工務店(Takenaka Europe)
竹中工務店の欧州法人 Takenaka Europe は1973年から欧州で活動しており、現在は欧州13カ国で1,500件以上のプロジェクトを手掛けています。
特に製造施設分野では、自動車・食品・研究施設など多様な案件を受注しています。
また、ハンガリー拠点だけでも1994年設立、80人超の体制で、特に2000年以降は自動車・自動車部品の生産施設で経験を蓄積しています。
Hyundai Motor Manufacturing Czech
- 所在地:チェコ・ノショヴィツェ
- 延床面積:約240,000㎡
- 完成:2008年
韓国自動車メーカー Hyundai の欧州生産拠点として建設された大規模工場です。
設計・施工を竹中工務店が担当しました。
Mubea Poland 工場
- 所在地:ポーランド・Ujazd
- 延床面積:23,526㎡
- 完成:2016年
ドイツの自動車部品メーカー Mubea の欧州工場。
その後、2022年には増築案件も竹中が受注しており、リピート案件となっています。
ARYZTA Poland 食品工場
- 所在地:ポーランド・Strzegom
- 延床面積:約9,000㎡
- 完成:2022年
スイス系食品企業 ARYZTA のベーカリー製造施設。
食品工場特有の衛生設計や温度管理を含む設計・施工を担当しました。
Nexen Tire Europe Technical Center
- 所在地:ドイツ・Kelkheim
- 延床面積:6,742㎡
- 完成:2018年
韓国タイヤメーカー Nexen の欧州R&D拠点。
研究施設・展示スペースを備えた複合施設です。
鹿島建設(Kajima Europe / Kajima Poland)
鹿島建設は1975年から欧州で事業を展開し、現在はポーランド、チェコ、ドイツなどを中心に活動しています。
Electrolux Poland 工場
- 所在地:ポーランド・Oława
- 延床面積:52,285㎡
- 工期:2005–2006年
スウェーデンの家電メーカー Electrolux の洗濯機工場。
安全施工コンテストで1位を獲得しています。
Parker Hannifin Poland 工場
- 所在地:ポーランド・Siechnice
- 延床面積:12,680㎡
米国の油圧機器メーカー Parker Hannifin の工場。
建築工事だけでなく、生産設備関連のインフラ工事も担当しました。
Gates Poland 工場
- 所在地:ポーランド・Legnica
- 延床面積:26,300㎡
- 工期:2017–2018年
米国の自動車部品メーカー Gates のゴムホース工場。
既存工場を止めずにインフラ更新を行うなど、高度な施工管理が求められた案件です。
Colgate-Palmolive Poland
- 所在地:ポーランド・Świdnica
歯磨き粉製造ラインの増設プロジェクト。
設計・施工だけでなくLEED Gold認証取得にも対応しました。
非日系メーカーが日系ゼネコンを使う理由
欧州の事例を見ると、非日系企業が日系ゼネコンを採用する理由は主に4つあります。
1. Design & Buildによる責任の一本化
日系ゼネコンは
- 設計
- 建設
- 設備導入
を一体で管理するDesign & Build方式を得意としています。
これにより、
- 工期短縮
- コスト管理
- 責任の一本化
が可能になります。
2. 工場建築ではなく「生産施設」を理解している
日系ゼネコンの特徴は、単なる建物ではなく
生産プロセスを理解した施設設計
を行えることです。
たとえば
- 食品工場(ARYZTA)
- 自動車部品工場(Mubea)
- 化学・油圧部品工場(Parker)
など、業種の異なる工場を横断的に施工しています。
3. 欧州規制と日本式品質管理の両立
欧州の工場建設では
- 環境認証(LEEDなど)
- 労働安全
- EU規制
への対応が不可欠です。
日系ゼネコンは
- 欧州の法規対応
- 日本式の品質管理
を組み合わせたプロジェクト運営が可能です。
4. リピート案件の多さ
実際のプロジェクトを見ると、
- Mubea工場 → 増築
- NGK Ceramics → 工場 → 太陽光発電設備(NGKは日系企業ですが)
など、同じ顧客から継続受注しているケースが多く見られます。
これは納期・品質・コストの予見性が高いことを意味します。
欧州ビジネスのヒント
日系ゼネコンに学ぶ「非日系企業への攻め方」
欧州で非日系顧客を獲得するために重要なのは、日本語対応ではありません。
重要なのは次の5点です。
- Design & Buildで責任を一本化できること
- 工場の「生産立ち上げ」を理解していること
- 欧州規制と品質管理の両立
- 短工期でのプロジェクト運営
- リピートにつながる信頼性
つまり、欧州では**「この会社なら工場が予定通り稼働する」**という評価こそが最大の営業力になります。
まとめ
日系ゼネコンの欧州事業を見ると、
- 韓国企業
- ドイツ企業
- 米国企業
- スイス企業
など、多くの非日系企業から工場建設案件を受注しています。
これは、日本企業向けのサービスというよりも、製造施設プロジェクトを確実に立ち上げる能力が評価されているためです。
欧州市場でビジネスを拡大する日本企業にとって、日系ゼネコンの事例は**「非日系企業に対してどう価値を提供するか」**という点で非常に参考になると言えるでしょう。
References
https://www.takenaka.eu/en/portfolio-items/hyundai-car-factory/
https://www.takenaka.eu/en/portfolio-items/mubea-poland-factory/
https://www.takenaka.eu/en/portfolio-items/mubea-extension-poland/
https://www.takenaka.eu/en/portfolio-items/aryzta-food-production-factory-poland/
https://www.takenaka.eu/en/portfolio-items/nexen-tire-europe-technical-headquarter/
https://www.takenaka.eu/en/designbuildprocess/
https://www.takenaka.eu/en/location-hungary/
https://kajima.pl/en/realizacje_post/elektrolux-olawa/
https://kajima.pl/en/realizacje_post/parker-hannifin-siechnice/
https://kajima.pl/en/realizacje_post/gates-legnica/
https://kajima.pl/en/realizacje_post/colgate-palmolive-manufacturing-projektowanie-swidnica/





